旅行と私と世界平和と。
- Maiko
- 2021年5月14日
- 読了時間: 3分

旅行や観光業は平和産業であると、よく耳にする。
旅行会社で8年間働かせてもらった私も、実体験からつくづくそう感じている。
自然災害、紛争やテロにデモ、ストライキ、感染症・・・エトセトラ。世界中のありとあらゆる状況に翻弄された日々がある。
バンコクでデモが起こった日の朝。バンコク空港閉鎖に伴い、成田空港発ーバンコク行きの便は全てフライトキャンセルという決定が早々に出ていた。
いつの時も有事の際は、情報が錯綜するもの。私が担当するお客様は名古屋セントレア空港からの出発で、バンコク便は出発予定だと言い張って、空港へ向かってしまった。確かにその時は未だ、セントレア発ーバンコク行きの便はフライトキャンセルの連絡は入ってはいなかったが、それは伝達の速さの問題で、状況は変わりはしないのだから、遅かれ早かれフライトキャンセルになるはずだった。
でも、娘さんとの旅行を楽しみにしていたその人は、諦めきれなかったのだろう。セントレアに着いてから、やっと観念した。私は、状況を知らせるために、それから航空会社の正式発表を確認するために、お客様と連絡を取り続けていた。
結局、セントレア発のバンコク便も全てフライトキャンセルとなる、言わずもがなである。
「今から、どこかに行きたい。」
電話口でお客様は、そう呟いた。時間は午前10時を少し過ぎた頃だったと記憶している。
せっかく休みを取って娘とウキウキしながら準備をして空港にもいるのに・・・。という気持ちが、電話口からヒシヒシと伝わってきた。
お客様が予約していたのは、募集型企画旅行のバンコクツアーだったので、フライトキャンセルにより解除権が発生、全額返金可能である。この浮いたお金をそのまま次の旅行代金にスライドさせれば手続きもスムーズだ。
私は韓国を提案した。セントレアから13時発のソウル便に空席があったし、近くで手軽に行けること、バンコクツアーの代金でお釣りが出る上に、ホテルもグレードアップできる。
「ソウル行きたい!!」娘さんが隣で言っている。
その一言で、私はアシアナ航空の席をブッキングし、ホテル課へ連絡、ソウル支店へ急ぎホテルを抑えてもらうようお願いする。ホテルOKの回答が瞬く間に入る。
請求書兼旅程確認書をメールで素早く添付し、お客様のGO!が出たらチケットの緊急発券を発券課に依頼。無事チケットが発券されて、お客様は空高く飛んでいった。

日本だけではなく、香港や台北など世界各国で発生する台風によるフライトキャンセル。フランスやドイツで頻繁に起こる、空港スタッフや航空会社、鉄道会社のストライキ。
そんなことが起こる度に、旅行会社スタッフはきっと、大なり小なり、てんてこ舞いになるのだ。
世界中の色んな場所で起こる様々な現象に敏感に反応してしまうのは、「飛行機飛ぶかな?」「○○国にいるあの人は大丈夫かな?」などと考える癖がついてしまったからなのかもしれない。
順調に空港から世界各国へ飛行機が飛び立てる状況は、緊急対応に追われず仕事をこなせる平穏な職場という、旅行会社にいる小さな私の世界でも、まさしく平和だったのだ。
米米クラブの歌う「浪漫飛行」の歌詞に、「もう一度空へ。」という一説があるのだが、旅行できないと生き苦しい私は、これを聴くとついつい、じ〜ん。としてしまう、今日この頃です。
Smiycle
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