幹事様はインド人③
- マイケル
- 2018年6月9日
- 読了時間: 3分

Akshay Kumar
彼は、そう記した。パスポートの名前の順番は姓/名 姓別が基本である。航空券のチケットをブッキングする時に、入力する名前の順番も姓/名 性別である。
私は、AKSHAY/KUMAR MR と慎重に航空券予約システムに入力した。インド人の姓名について何一つ知識を持っていなかった私は、当然のごとく、アクシャイが名字で、クマルは名前だと思っていた。発音がし易いからという、ただそれだけの理由で、私は、インド人の彼のことを『クマルさんクマルさん』と呼んでいた。インド人がクマルさんだらけだということをこの時、私は、露ほども思わなかった。こじんまりした支店は空いており、USENから流れてくる名前も知らない洋楽は心地よく、航空券の座席も希望通り6名分無事に確保ができ、ホッとしながら穏やかな時間が流れていた。
『私の名前は、アクシャイです。』

突然のカミングアウトだった。
心地よかった音楽は、一気に私の耳からシャットダウンしてしまった。なぜなら、クマルさんが希望していた安い金額のチケットの席は、もうなかったのだ。航空券の料金システムは流動的で同じサービスのエコノミーの席でも料金設定は段階式になっている。つまり、クマルさんが希望していた6万円のチケットはすでにさっき、私が予約した時点で満席になり、次の段階の8万円のチケットしか席が取れなくなってしまっていたのだ。席は空いてる、でも希望の価
格の席は空いていない状況であった。

アクシャイが名前なら、クマルは名字になる。姓名が逆なら、この予約は取り消してもう一度取り直しをしなければならない。でも、希望価格の席はない。航空券予約システムの難しいところは、自分がキャンセルした席が、もう一度上手いこと、復活する訳でもないということだ。つまり、私がさっき取ったクマルさんの席をキャンセルしても、その1席は空席として出てくるかわからないのだ。航空券の予約システムは、単純な足し算引き算では計算できない。航空会社も、なるべく高く売りたい、でも料金設定を高くしすぎてチケットが売れずガラガラの状態でも困る。安い金額の席、中くらいの金額の席、高い金額の席など、同じエコノミーの席でも何段階にも料金設定をし、その時々で予約状況を見ながら、席をしめたり、あけたりするのだ。私が航空券は生ものであると思う所以は、ここにある。知らないところで、密かに航空会社との壮絶な心理戦が繰り広げられている。

KUMAR/AKSHAY MR が正しかったのか。。。(あれほど、確認したじゃないか。パスポート通りに書いてくれと)と、この時、インド人の名前の不思議を知らない私は、クマルさんをじとっとした眼差しで見つめてしまった。
一気にフランスが遠のいた気がしたのだ。

待ってろフランス〜。
Smiycle
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